アパートの建築を近隣住民から反対されたとき

アパート建築

アパート建築の計画がだんだん具体的になってくるまでは、
プランニングとか資金繰りとかで頭がいっぱいで、
オーナー様もまだ細かいことまでお考えになる心の余裕が無いのが普通です。

そして、いろいろ乗り越えてようやく計画が実現できそうとなったときに、
ふと気になってこられることが多いのが、

この場所にアパートを建てたときに、周辺の住人さんは快く受け入れてくれるだろうか?

という疑問です。

そして計画がきまってから、実際に周辺住民さんに事前説明に行き、
アパート建築を予定しています、とお伝えをすると
けっこうな割合で当惑されたり、苦情めいたことを言われることがあるのです。

それどころか、きっぱりと「建築を断念してくれ」とか「アパート建築に反対です」と言い切られたこともありました。
ひどいときには、自治会館での事前説明会に何十人もつめかけて反対を受けて、
反対署名までいただいたこともあります。
(ただしこのケースは、本来アパートを建てられないと決めてられていた団地内で、
無理して建てようと計画したせいなので、住民さんの反応が普通なのですが、、)

そんなときは、いったいどうしたらいいのでしょうか?

今回は、アパート建築のときの近隣住民さんとの調整のきまりや、
具体的にどういった対応をしていくのか、という点について
実務で実際に行っている内容をお伝えさせていただきます。

そもそも近隣への説明は必要なのか

わざわざ近隣住民に説明しなくても、黙って工事をすすめちゃったらいいんじゃないの
とおっしゃるオーナー様もおられます。

たしかに、事前に説明に行けばいろいろ言われる可能性も出てきますし
説明された住人さんも、何か要望を言えば聞いてもらえるかもしれない、と思ってしまうかもしれませんよね。
それなら勝手に進めてしまえば余計な心配をしないで済むんじゃないか?
と思うお気持ちもわかります。

でも実際の経験上では、説明をせずに工事を始めたとしても、
結局は建築会社の私たちのところに近隣住民さんから連絡が入って、計画の説明を求められたり
建築計画の内容への苦情や、変更を求めてこられたりして
工事を行う業者としては、対応をせざるを得なくなるのが実情なのです。

いや、むしろ事前に説明していたらまだ冷静に話し合いができた内容でも
だまって工事をどんどん進めていたことで感情的になられてしまうケースが大半なので
それなら最初から説明しておいた方が安全だと思っています。

そして、そうしたトラブルを防ぐために、
地元の市町村が説明のルールを定めていることも多いのです

アパートなどを建築するときに、開発指導要綱(または条例)という取り決めを作っている市町村があり、(無いエリアもあります)
その取り決めのなかに近隣住民さんへの説明をしなさい、というルールがおかれています。
※開発指導要綱については、アパートを建てるとき、まずいちばん最初に調べること 開発指導要綱について をご参照ください。

たとえばこんな感じです。(文章を一部省略して抜粋しています)

市町村によって具体的な内容は違ってきますが、だいたいこんな感じです。

説明が終わったら報告書を作成して、市町村の窓口(開発指導課、といった課があります)に提出しないといけないのですが、
やっかいなのは、たいていこの報告書に自治会長さんの印鑑をもらわないといけないことです。

なので、たとえば近隣住民が猛反対していたら、報告書のなかにそのことも記載されますので
自治会長としてはさすがに印鑑を押すわけにもいかないですから、
「もうちょっと話し合ってきてください」などと言われてしまうはめになります。

近所からはどんなことを言われる?どう対応する?

では近隣住民さんや自治会に説明をしたときに、実際にどんなことを言われるのでしょうか

いちばん多いのは、工事の時期作業の時間帯、どんな間取りか(単身者向けかファミリー向けか)、2階建てなのか3階建てなのか、
といった普通の質問をされることが大半です。

よほどの郊外ならともかく、いまどきアパートなんてあちこちに建っていますから
工場や商業施設とちがって、それほど迷惑がかかる建物というわけでもないので、
きちんと誠意をもって説明すれば、意外にそれほど抵抗はないように思います。

とはいえ近隣の方にとって、今までお住まいになっていた環境が
変わってしまうことは間違いないので、
不安もあり、どうしてもいろいろ言いたくなってしまうのも無理もなことです。

具体的にどんなことを言われるのか、
私が過去に言われてきたなかでも、特に多かった例を紹介させていただきます。

たとえば、下記のようなプランの場合です。

普通のファミリー向けプラン、2階建て6世帯です。
敷地内に駐車場も設置してあります。
何の特徴もないごく普通のプランですが、近隣の方からみれば違って見えます。

まず右側のお隣さんからは、こんな感じです。↓

駐車場に面したお隣からは、車の騒音と排気ガスを言われることが多いです
人が通るなら静かでいいけど、車はうるさい
とか
排気ガスがこっちに向くと環境が悪くなるから前進駐車にしてください。
とか言われます。
(前進駐車は、仮にそう取り決めても、入居者さんはあまり守らないので約束しない方かいいです)

左のお隣さんからはこう言われます。↓

自分の家の横を、知らない人にうろうろ通行されるのが気になってしかたない
駐車場のほうがまだよかったのに、
とか、右隣の方とは真逆のことを言われたりします。
(でも左右入れ替えたとしても、やっぱり結局同じことを言われるだけですが)

そしてゴミ置き場をこっち側にしないでくれ、というのも必ずといっていいほど言われます。
でも反対側に設置したら、またそっち側で同じことを言われるんですけど。

裏のお隣からはこんなことを言われます。↓

これも定番で、
2階の廊下から庭やリビングが見下ろされて丸見えになる、と
高い確率で苦情を言われます。

ついでに自治会さんからはこれです。↓

自治会さんの会員さんのなかには、小さいお子さんのおられるご家庭もあり
アパート建築によって車の出入りが多くなることで、事故がふえるのではないかとの不安から
自治会長さんからは、出入口にミラーを設置してほしい、という要望を出されたりします。
(設置費用はもちろんオーナー負担で)

じゃあ、そこらじゅうにある月ぎめ駐車場はいいんですか?と聞きたくなりますが、
それは言えません。

近隣住民が反対したら、建てられないの?

先ほどの例でもあったように、お隣さんの立場となれば
少しでも自分たちの都合のいいように計画を変更してほしいと思われるものです。

そして、お隣さんが声の大きいタイプの住民さんだったりすると、
オーナーさんにとっては、それが脅しのように聞こえてしまうこともあり、
もうアパート建築をあきらめようか、とまで思い詰める方までいらっしゃいます。

こんなとき、私たちが調整する解決策とは
近隣の方のご希望をある程度は取り入れつつ
もともとのオーナー様の計画案の内容を損なわないよう、できる限りの修正案を考える
というやり方になります。

近隣の方のご要望をすべて聞き入れていくと、計画が成り立たなくなりますし
(そして要望を言う側の近隣の方も、ダメもとで言っておられることが多いです)
そもそも自分の土地なのですから、よほどの迷惑をかけない限り自由に使う権利があります

いっぽうで、ご近所のご要望を一切聞き入れないとなると、
それはそれで感情的にこじれてしまいます。

そこまで対立してしまうと、近隣の方も何とかして邪魔してやろうという気持ちになりますから
押し切って工事に取り掛かったとしても、
ちょっとしたことで市役所に苦情の電話を入れられたりして、何度も工事が止まってしまったりします。

なので、ちょっとだけ歩み寄る計画案を作っていきます
たとえばこんな案です。↓

オーナー様にとっては、当初の計画から変更してしまうことにはなりますが、
もともとの基本的な内容は維持しつつ、
戸数や駐車台数などを変えることもなく少しだけ修正します。

目隠しの設置費用など、費用的なご負担をおかけしてしまうことにはなってしまいますが、
大きな変更は起きないように注意します。

いっぽう近隣の住民さんにとっては、ご要望が100%満たされたわけではないかもしれませんが
ご心配されている点は、ある程度解消させていただいています。

このあたりを落としどころにして、双方にご納得いただく
というのが実際の現場で行われている内容なのです。

そして最後に。
もしここまで譲歩しても、近隣の方が全く譲歩して下さらなかったらどうするか

たいていの方は、ここまでやると渋々でも納得はされるのですが
1軒だけ、どうしても譲らないという方がおられたりするケースはあります。

そんなときは、市町村の開発指導をそのまま終了してもらうよう市役所と交渉して
反対があるまま工事を進めるという選択をすることが多いです

え? 近所が反対したら自治会長さんが報告書に印鑑を押さないんじゃないの?
そして、それだと市町村の開発指導を無視することにはならないの?
と思われるかもしれませんが、冒頭の指導要綱の例文をよく読んで下さい。

そこには「十分説明して、協議を行わなければならない」とは書かれていますが、
許可を取りなさいとは、どこにも書いていないのです

市町村も、十分に説明を重ねて計画変更まで行っているオーナーさんに対して
1軒のお隣が反対している(しかも理不尽な言い分で)というだけでは、
建築のストップを命令できる理由にはなりません。

市役所や自治会などとも十分に話し合って、一部の方の反対を受けていたとしても
最終的には行政指導をクリアするように持っていく
のです。

行政指導の無い市町村もあり、その場合は市町村の承認は要らないのですが
届け出はいらないそうした地域でも、工事が始まってからのトラブルを防ぐ意味で
同じようなプロセスは踏んでおいた方がいいと思います

まとめ

  • アパート建築の際に、近隣説明を義務付けている市町村があるので注意
  • 普通のアパートのつもりでも、お隣さんから見たら気になる点は多いもの
  • 反対されても、建てられなくなるわけではないので冷静に対応を

アパートの建築にあたって、周辺住民さんとの意見調整について今回はお伝えさせていただきました。
実際の実務では、地元の自治会館をお借りして近隣説明会を開いたり、
隣接住民さんのお宅に何度も伺って説明をさせて頂いたり、
ご近隣対応はけっこう大変なものなのです。

通学路にあたる場合は、大きな工事車両が通る日時や時間帯などを
小中学校に説明に伺ったりすることもあります。

でも、完成した建物にお住まいいただくご入居者さんたちを、
地元の皆さんに気持ちよく受け入れてもらいたいですから
こうした事前のご説明ご挨拶と、ご近隣との意見調整はきっちり行っておくべき
だと思っております。

土地活用のご計画の参考にしていただけたら幸いです。

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