最近の新築マイホームには太陽光発電の設備が取り付けられているところが増えました。
またZEH住宅(ゼロエネルギーハウス)という、高い省エネ性能とセットされた高性能な住宅には、補助金が下りることもあって人気が高まっています。
アパートの分野では太陽光発電はどのように使われているのでしょうか。そして、太陽光発電を設置することはアパートの価値をどのように高めていくのでしょうか。
そしてそのコストに見合う効果は得られるのでしょうか?
ここではアパートに太陽光発電システムを設置することの効果について、賃貸住宅の最新の情報もふまえて考察をさせて頂きます。
太陽光発電システムは、アパートにどうやって使われているか
まず、太陽光発電システムをアパートに取り付けた場合に、どういう使い方をされているのかという質問をされることが多かったです。
これには2通りの方法があります
①アパートの屋根にソーラーパネルを設置して発電し、その発電した電力を全部電力会社に売って家主さんの収益にするパターン
②発電した電力は、家主さんではなく入居者のものとして自家消費できるようにし、余った電力の収入も場合によっては入居者に還元するパターン
大きくわけるとこの2通りです。
それぞれを順に説明させて頂きます。
どちらのパターンも今まで数多く担当させて頂いてまいりました。
発電して電力を売って家主さんの収益にする
これは発電した電力を電力会社が買い取りする法律ができた2003年当初から主流となったやり方で、
大量に発電した電力をほとんど自家消費せずに余らせて、家主さん名義でそのまま電力会社に売って収益にする方式です。
どうしてそのやり方が主流だったかというと、当時の電力の買取価格が異常に高かったからです。
当時は「倍額買取り」という名前で呼ばれていましたが、電力料金が1キロワットあたり24円くらいだった時代に、発電した電力は1キロワットあたり48円という、ほぼ倍の値段で買い取る破格の条件でした。
とても収益性が高かったので、この当時はこぞってこのやり方をとっておりましたが、その後だんだん買取価格が引き下げられていき、現在では高くても1キロワットあたり16円まで下がっています。
いまでもこのやり方をやっているところもありますが、以前ほどの収益があがらないため少なくなっています。
発電した電力を入居者が使う
もう一つのやり方は、ソーラーパネルで発電した電力をアパートの入居者に使ってもらってメリットを与えるやり方です。最近ではこちらが主流になってきているようです。
同じ地域にたくさんのアパートが立ち並んでくると、家主さんにとっては競争に勝ち残っていくためには何か他のアパートとは違うメリットを備えておく必要があります。そんなときに太陽光発電の電力を利用できるという利点は、電力料金を含めた光熱費が高くなってきた最近は少しづつ注目されるようになってきました。
また、令和6年から「建築物の省エネ性能表示制度」(国土交通省ウェブサイト)がスタートすることで、賃貸募集広告にその建物の省エネ性能を表示することも、努力義務(強制ではない)とはいえ求められるようになってきますので、入居者が毎月の光熱費に直結する省エネ性能を比較して賃貸住宅を選ぶ時代が近づいてきているかもしれません。
ただこの方式だと、家主さんへの直接の収入がどのくらい増えるのかがわかりにくい点がデメリットです。
入居者のために太陽光発電設備をつけることで、どのくらい収益に貢献するのでしょうか。
入居者向けソーラーは収益に貢献する?
入居者向けの太陽光発電設備を家主さんに提案したときに、必ず聞かれる質問は「で、それで入居者さんからの家賃はどのくらい引き上げられるの?」という、賃料アップの可能性についてです。
太陽光発電の設備は、最近は普及してきているとはいっても設置には大きなコストがかかります。
6世帯のアパートに対して、1件あたり2キロワットの容量のソーラーパネルを取り付けたとしても、全体では12キロワットの規模になり、総額では350万円~400万円は追加で工事費がかかることになります。
仮に400万円の追加の投資を10年で取り戻そうと考えたとしたら、年間に40万円(月額だと3.3万円)の収入が増えないといけないことになります。
これを6世帯で割り算すると1世帯あたり5.5千円の賃料を上乗せしないといけません。
いっぽう、2キロワットのソーラーパネルによって入居者が節約できる光熱費は、だいたい4千円~5千円くらいですので、もし賃料が相場よりも5千円も高かったら入居者にメリットはあまりありません。せいぜい2~3千円くらいの上乗せができる程度、と考えておいたほうがいいと思います。
なので収益にはあまり直接的な貢献はしてくれなさそうです。
ただ入居募集のときに、ソーラーが使えるという利点をアピールできますので、お部屋の差別化によって入居率を高くできる効果は見込めるかもしれません。
じつは、実際にソーラーをお使いいただいている入居者さんと私自身が直接お話ししたことが、いままでに何度かあります。
ソーラーのことなどそれほど気にしていないだろう、と思ってお話ししていたのですが、私が想像していたよりも発電量の記録などをよく見ておられました。光熱費が安いことを実感しておられた方も多かったです。
お部屋の快適性を上げるためのアイテムであることは確実に言えると思っています。
太陽光発電の補助金について
太陽光発電への国や市町村からの補助金はかなり古くからありましたが、たいていは自分用のマイホームに対してのものが大半でした。アパートは収益目的の事業なので、補助金の対象から外れることが多かったです。
過去の例で初めてアパートなどの事業用の建物に太陽光発電の補助金が出るようになったのは、私の記憶では2009年(平成21年)の「新エネルギー等事業者支援対策費補助金」が最初だったように思います。
私のお客様も当時申請いただき採択されました。採択者リストのなかには阪神甲子園球場の銀傘に設置する事業などもあったように覚えています。
それ以来いろいろ名称は変わりましたが、アパートの太陽光発電への補助金は何らかのの形で続いておりました。
現在は太陽光発電と省エネ性能を組み合わせた「集合住宅ZEH(ゼロエネルギーハウス)」による補助金交付が経済産業省と環境省によって行われています。令和6年度については、一定の条件を満たす賃貸集合住宅に対して、1世帯当たり40万円の補助金が出ることとなっています。
補助金を受けるには申請のための複雑な計算が必要ですし、交付決定までは工事に取り掛かってはいけないなど、細かくて厳しいルールがたくさんあり、建築会社としては図面作成や計算などで大変な作業をすることとなります。正直なところ相当面倒くさいです。
でも、もしアパートに太陽光発電を取りつけようとお考えでしたら、ぜひトライしてみてください。仮に先ほどの例で、6戸に太陽光発電を設置して400万円かかったとしても、補助金を240万円(6戸×40万円)受け取れたとしたら、差し引き160万円の負担で設置できたことになります。
2千円しか月額の賃料をアップできなかったとしても、投資額を10年くらいで取り戻すことができるようになるかもしれないですので。
まとめ
- 太陽光発電は家主さんの収入源ではなく、入居者が使うのが主流
- 入居者向けソーラーは収入にはならないが、募集のための武器と考える
- ZEH補助金はぜひ活用すべき
今回は、アパート経営と太陽光発電の効果についてお伝えさせて頂きました。
令和6年度も、私のお客様の集合住宅ZEHへのお申込みの予定がございます。年度末の補助金交付をうけるまで、気が抜けない日々がつづくことになりそうです。

