アパート経営に踏みきろうとご決断をされたお客様でも、いざスタートしたあとにそのアパートの維持管理の費用が実際にどのくらいかかるのか心配をされている方が多いです。
あまりにも維持管理費がかかりすぎて、副収入どころか持ち出しになってしまっては、なんのためにアパート経営を始めたのかわかりません。
逆に、あらかじめ将来必要になる維持管理費を予想できていたとしたら、その費用が払えるように日ごろからの収入を貯蓄しておくこともできます。
それをしっかりとできていたら、突然の出費もそれほど心配しなくてよくなります。
アパート経営を始めたら、いったいどんな支出がでてくるものなのでしょうか。
今回はアパート経営の修繕費のめやすをお伝えいたします。
例とさせていただいたのは、私が実際に担当させて頂いたお客様のアパートです。
たまたまお客様から、
①築15年を節目に、今までかかった修繕費をまとめてほしい②向こう15年で、今後かかるであろう費用を教えて欲しい
と要望され、お調べすることになりました。その結果を具体的な数字でお示しします。
※あくまで実際の一例です。アパートごとに、設置している設備や外壁の材質などが違うため、建物によってかかるコストは異なります。
修繕費には種類がある
修繕費と一言で言っても、その性格からいくつかの種類に分かれます。
主なものを以下のように分けました。
入居者が退去したあと、つぎの入居募集のための修理(原状回復費)
まず、入居者が退去したあとの費用です。たとえば壁紙などをあたらしいものに張り替えたり、傷がついた床を修理したりする費用などがこれにあたります。
これは入れ替わりのたびに発生する費用なので、定期的にずっとかかります。修理の度合いも、入れ替わりのタイミングもケースバイケースなので、予想がつけにくいです。
以前は入居者さん負担で請求できてた費用なのですが、いまは大部分が家主さん負担となってます。
古くなってきた設備などを新しいものに取り換えていく費用(設備交換)
これはお部屋にある設備が故障したり、古くなって取り換えなくてはいけないときにかかってくる費用です。主なものとしては、エアコンや給湯器などの交換です。
例えば、あるお部屋のエアコンは20年経ってもなんともないのに、べつのお部屋のエアコンは5年目にもならないのに何度も修理を繰り返す、といった現象が起きるので、あまり規則性はありません。
まぁ、たいてい15年くらいで入れ替えていくと割り切って予定していきます。
建物そのものが老朽化していくのを補修していく費用(外部維持管理費)
こちらはまさに、建物そのものの維持管理費です。
下水管の洗浄、消火器の取り換え、錆びる部分の塗装、外壁塗装や屋根の補修などがそれにあたります。
これはどちらかというと何か起きる前に定期的に計画して行っていくタイプの維持管理です。
ワンルーム10戸で15年までに実際にかかった費用
ここからは私が担当したお客様の例で、実際にかかった費用をもとに説明していきます。
建物はワンルーム10戸で、15年目までに実際にかかった費用です。
最初は原状回復費です。これは退去があるたびに補修などでかかる費用です。
この建物で過去15年間にのべ33回の退去があり、合計で200万円くらいの改装費がかかっていました。
次に設備の修理や交換です。
エアコンなどは早いものだと10年もしないうちに壊れて交換することもあります。あとインターホンやキッチンの蛇口といった、細かいものも故障したりして交換することがあります。ここではだいたい50万円くらいの費用がかかっていました。
それとは別に、昔は必要なかった設備でも今の時代には必須となっている設備を新規に入れたりすることもあります。このアパートが建てられた当時はウォシュレットなどは必要なかったのですが、いまでは必須の設備なので、13年目くらいに全室取りつけました。これで30万円を使っています。
あと必要なのは、建物外部の維持管理費です。
いちばんお金がかかるのは外壁の再塗装の費用です。古くなってくると見た目がどんどん汚くなっていきますので、入居者もあまりひどい物件は印象が悪いため敬遠します。外観をきれいに保つことはけっこう重要なのです。
この建物は15年目までに再塗装はしていませんが、階段などのさび止めや屋根の塗装などは行いました。180万円くらいかかっています。
15年目まで、といっても結構な費用がかかっていますよね。合計すると460万円くらいの修繕費をかけていました。

つぎは、これからさきにかかってくる費用を予測してみます。
ワンルーム10戸でこれからさき15年で予想される費用
これからの15年(15年目から30年目まで)に、どのくらいの費用がかかってくるでしょうか?という問いに対して、管理会社さんと相談して予想をしてみました。
こんな感じです。

まず退去後の補修費は、15年目までと同じサイクルでお部屋の入れ替わりがあると想定して、15年目までとおなじ200万円で想定しています。
設備の交換や修理については、15年目までに発生しているエアコン、インターホンの交換の他に、
ガス給湯器や洗面化粧台、ウォシュレットなどの交換も必要となってくると予想しています。
キッチンの流し台やユニットバスについてはこのまま使い続けるという前提にしました。
キッチンやバスユニットそのものを交換してリニューアルしているアパートもあるので、このリフォーム費を計算に入れるかどうかは難しいところです。
価値を高めていくタイプのこうしたリニューアル工事(リノベーション)は今回は分けて考えることにして、計算には入れないことにいたしました。
ただし、キッチンと浴室の水栓金具だけは全部交換するという費用は含めました。
その他の細かい修理の予想額も含めると、設備についての修繕費は720万円という予想です。
最後に建物の外部など、全体の維持管理の費用です。
15年目までは外壁塗装は行ってこなかったので、30年目を迎えるまでに外壁塗装が必要になるかと思います。外壁の材質によっては30年目までに2回の塗装が必要になる場合もありますが、今回は1回だけで30年を乗り切るものとします。
外壁塗装の費用は、塗料の種類によってコストはまちまちですが、ここでは400万円といたします。
他にも、階段や廊下の表面が傷んできますのでその補修なども必要になります。下水管の洗浄なども必要かと思われます。これらの費用を70万円として足しておきます。
向こう15年間で必要になってくると思われる、こうした費用をすべて合計すると。。
全部で1,390万円が必要になってくる、という予想になりました。
多額の修繕費用をどうやって工面するか
15年目までに実際にかかった修繕費が460万円、30年目までにさらにかかってくると思われる費用が1,390万円となると、30年間のあいだに1,850万円ものお金を修繕費として使わなくてはいけない、という恐ろしい結果となってしまいました。
これでは、アパートを建てたばっかりにとんでもない出費をするはめになってしまった、と後悔することになるように思えてきます。
でも実際にはそこまで深刻なことにはなりません。計画性のある家主さま達は、こういった費用がかかることに備えて、日ごろからその資金を準備して貯蓄しておられるからです。
分譲マンションの管理組合などが、将来の修繕費の準備のためにやっているやり方として「修繕積立金」というものがあります。
これと同じ考え方で、アパート経営をお勧めするときには私たち建設会社も必ず修繕準備金という予算を提案しています。
例えば今回のケースだと、30年間で1,850万円の資金が必要になると予想をしています。
これを1年ごとだといくらになるか計算してみると、
1,850万円÷30年=62万円(毎年)
という金額になります。つまり毎年アパートの賃料から62万円づつ積み立てていけばなんとか準備できる計算となります。
年間62万円を積み立てる、というとこれも大変そうに聞こえますが、毎月に割るとだいたい5万円になります。
今回はワンルーム10室での計算ですので、この5万円を一部屋当たりのコストに割り算してみると、各部屋ごとの家賃から5千円を修繕準備金として貯めておけば大丈夫ということになるのです。
そう考えると、なんとなくできそうな気がしてきますね。
まとめ
- アパート経営では、退去ごとにかかる出費と、設備や建物の老朽化でかかる修繕費がある。
- 30年間でかかる修繕費を合計すると、想像よりも大きな金額がかかるので注意が必要
- 修繕費はいちどに準備するのではなく、毎月毎年コツコツ貯めながら準備していくこと
修繕準備金は、アパート経営で将来困らないようにするためにはとても大事な考え方なので覚えておいていただけるとよいかと思います。
最近は銀行でアパート建築の資金を借りるときに、貸付の条件としてこうした修繕準備金を貯金することを指定してくる銀行もあるくらいです。
計画的に資金繰りの準備をすることで、皆さまのアパート経営が安定し続けることを願っております。

