社宅貸しとアパート経営

賃貸管理

アパートの建築のご相談をうける際に、よく「社宅で借りてくれたらいいのに」というお声を耳にします。

どうしてそう思われるのですか?と、お聞きすると
「会社が借りてくれるなら、安心」とか、「社宅だと、ふつうのアパートと違ってずっと借りてくれるから心強い」とか、良いイメージのお返事が返ってくることが多いです。

社宅って実際のところ、どうなのでしょうか。

意外に聞こえるかもしれませんが、社宅としてアパートを建築することを私はあまりお勧めしてきませんでした。
もちろん良い面もあるとは思っております。でも、その反面リスクも大きいと思っています。

今回は社宅のメリットとデメリットを、実際の出来事などを交えて紹介させて頂きます。

社宅貸しではない、一般的な賃貸募集、賃貸管理のやり方については、アパート経営をするための入居者募集と管理業務で解説をしていますので、予備知識として目を通しておいていただけるとわかりやすいかもしれません。

社宅貸しと法人貸しは違う

まずそもそも社宅貸しとはどういうやり方を指すのでしょうか?
「会社が部屋を借りてくれる賃貸」というふうに漠然と思っておられる方が多いのですが、それには
社宅貸し
法人契約
の2種類があることを知っておいて頂きたいです。この2つは別のものです。

どこが違うのか?簡単にいうと、
社宅貸し→会社がお部屋を借り切って、そこで社員さんに住んでもらう。
法人貸し→社員さんが住む部屋を、会社が借りて契約する。
という点です。

一見おなじ内容のように聞こえますが、
社宅貸しはいったん会社がその部屋を借りたらずっと借り続けて、その部屋に住んでいた社員さんが転勤しても、また別の社員さんが入れ替わりで入居してきます。

いっぽう法人貸しは、転勤した社員さんが見つけてきたお部屋を、
社員さんが自己負担で家賃を払って契約するのではなく、会社で契約して家賃も会社が支払うやり方のことです。
この場合、ただ単に会社名義で契約しているだけで、社宅扱いではありませんから、その社員さんが転勤で退去したらそこで契約は終わりとなります。

家主様が、社宅なら安心とおっしゃる理由は、
社宅だと、会社がずっと長期間借りていてくれる」というお気持ちであることがとても多いですが、法人貸しだとその効果は全くありませんのでご注意ください。

社宅のメリットとは

社宅で借りてもらえることには、どんなメリットがあるのでしょうか。

社宅も法人貸しも、どちらも借り主は会社ですので、
入居している本人とは契約せず会社契約することになりますから、社宅でなく法人貸しであっても安心感はあります。

会社は個人と違って、口座がうっかり残額ゼロになってて家賃が引きとせなかった、なんてことはありませんから、社宅も法人契約も賃料の滞納の心配は少ないです。
でも社宅にはそれ以外のもっと大きなメリットがあります。

社宅のいちばんのメリットは、比較的長期間にわたってお部屋を借り切ってくれることで空室が発生しなくなる、ということです。

たとえば、6室のアパートを15年間社宅で借りてくれる契約をしてもらえたとき、ふつうの契約とくらべてどう違ってくるのでしょうか?

社宅ではない一般のアパートだとしたら、仮に1室が平均3年間住んでくれるとしても、15年間で5回は入れ替わることになります。6室だと延べ30室入れ替わることとなります。
入れ替わりごとに空室が1か月発生したとしたら、30か月分の賃料は入ってこないと考えないといけません。

それに対して社宅貸しだと、15年間は会社がずっと借りてくれていますから、
お部屋の入れ替わりのときの空室期間がないので切れ目なくずっと家賃が入ってきます
また空室後に入居者募集をする際に、次の入居者に部屋を気に入ってもらうために、お金をかけて部屋をきれいにしたりする努力もいらなくなります。

そして何よりも、「なかなか次の入居者が決まらない」「空室がいつまで続くのだろう?」という不安やストレスから解放されることが、家主さんにとっては大きなメリットになると思っています。

社宅にはリスクもあることを忘れずに

では、こんなにもいいことづくめの社宅契約なのに、あまり私がお勧めしていない理由はなぜなのでしょうか?

まずそもそも私は、社宅契約なんて全部ダメ!と言っているわけではありません。

地元の大きな会社さんや信用のおける大企業さんが、きちんとした立地にあるアパートを
長期間(10年とか15年間)の契約で借りてくれたり、場合によっては建物1棟ごと借上げたりする社宅契約はとても良いと思っています。

社宅契約です、といいながら家主さんに不利な条件の契約となる、「社宅契約もどき」を勧めてくる不動産業者さんや建設会社さんが多いように思うので、
あまり信用しないほうがいいですよ、ということをお伝えしたかったのです。
ましてや、その社宅契約があることを理由にアパート建築に踏み切るのは危険だと思っています。

社宅契約もどき、とはどういう意味かというと、
会社さんから、大量のお部屋をまとめて借りたいというオファーがきて、しかも入居者の社員さんが入れ替わっても続けて借りますよ、という条件まで出してきてくれる、というものです。

でも、社宅契約だと思って喜んでいたら、よく契約内容を見ると普通の賃貸契約(ただの大量の法人契約)で、
本当の意味の社宅契約ではない、みせかけの社宅契約であることが多いです。

この場合、借りてもらえる期間(逆に言うと解約できない期間)が決められていなかったり、長くても5年程度しか決めなかったりされています。これでは普通の賃貸契約と同じです。
まとめて一度に解約されるリスクもあることを考えると、むしろ普通の賃貸契約よりもリスクが高い契約だと思っています。

でも多くの家主さんはこのオファーを受け入れます。
なぜなら、その会社さんがその地域でまさに今ものすごく成長している企業(や、地域にあたらしくできた有名な大学)だったりするからです。

この企業さんが、そんなに簡単に社宅契約をやめるなんてことはないだろう、という安心感があるから、長期の契約を結ばなくても信用をなさるのです。
そしてその信用が崩れ去るのを私は数多く見てきました。

30年以上も賃貸住宅の建設の営業をやっていると、過去にいろいろな賃貸住宅ブームを経験してきました。
近くに工場ができたから、学校ができるから、派遣社員を地方から呼び集めるから、といったいろいろな理由で、いままでさびれていた地域にアパート建設ブームが起きてきました。

そして何年もして、あの大企業が工場を閉鎖する!とか、少子化で大学のキャンパスが移転する、とかリーマンショックの影響による派遣切り、だとか
そのブームが去ったあとのアパートの大量の空室も見てきています。

過去に実際にあったお話しですが、私が建設を担当させて頂いた30室のワンルームを、
1社で全室借りてくれた大手派遣会社の課長さんは、
当時まとめてお借りいただくことに乗り気でなかった私に
うちのような大手がそんな簡単に撤退するなんて、本気で思ってんの?」とずいぶん嫌味を言われました。
でも案の定、数年後にほぼ全室解約してこられて、大量の空室がいちどに発生したことで家主さんもずいぶん苦労なさいました。

社宅なのか、単なる法人貸しなのかの区別は、よほど注意して契約内容を読んでみないとなかなかわかりにくいものです。
ただ単に会社がまとめて借りてくれる、というだけの契約はありがたい反面、まとめて出て行ってしまうリスクもありますので、よく注意していただく必要があると考えています。

私が社宅貸しについて、あまりお勧めしない理由は以上のことからなのです。

まとめ

  • 社宅貸しは長期の会社契約のことで、法人貸しは普通の短期の賃貸契約とほぼ同じ
  • 社宅のメリットは、空室の心配や入れ替わりの手間がなくなること
  • 社宅契約は、解約すると一度に空室が生まれるデメリットがある

よく質問のある、社宅契約についての説明でした。

アパート経営の基本は、長期に安定した入居を保つことです。
まとめて借りてもらおう、とかあまり楽をしようと思いすぎず、
地域の入居ニーズを地道に調べて、手堅いプランで建設されることがいちばんだと思っています。

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