建築会社の営業社員として、
過去に、たくさんの賃貸アパート建築のお手伝いをさせていただいてまいりました。
今回は私が今まで見てきたなかで、
このパターンは失敗するだろうな、、と不安を感じるようなアパート経営のプランニングについてお話をさせていただきます。
実際に失敗かどうかは、スタートしてみないとわかりませんので、当てはまるからといって必ず失敗すると言うつもりはありません。
経験上、このパターンで失敗したアパートが多かったな、という感想だと思ってお読み下さい。
いまこの間取りが不足している、という罠
建築会社のアパート営業が、セールスの時によく使うセリフがこれです。
この話にすぐに乗っかるのは、あまりお勧めいたしません。
「いま、この地域では2LDKが不足していて、、
〇〇株式会社の工場が拡張しているのですが、ご家族で住める間取りが圧倒的に足らないのです。アパートを新築なさいませんか?」
たとえば、こんな感じで営業してこられます。

こんなことを言われると、それなら自分が役に立ってあげてもいい、と思いますよね。
でもそれって、本当に安全なのでしょうか?
いま、この地域ではアパートが足りないというのが事実だとしても、それがいつまでも続く保証などありません。
たまたま近くに工場ができて、社員さんの住む部屋が一時的に足りなくなったとしても
その需要を当て込んで、同じようなアパートがきっと周辺にたくさん建てられるでしょう。

そして、そのうちにアパートの数が増えすぎて、供給過剰になることだってあるかもしれません。
怖いのは、将来その工場が(その事業そのものが)縮小することになり、人員を減らす可能性もあることです。
工場でたくさん働いている方々がいなくなり、別の工場に転勤になっていくことだってあるのです。

アパートの空室が増え、入居の申し込みが減ってくると
賃料を下げて入居者に入ってもらうようになってきます。そうなると、当初見込んでいた収益がどんどん下がっていくのです。
良いお話が持ち込まれて、せっかく盛り上がっているところに嫌なことを言うようですが、
実際にそういった例をたくさん見てきました。
特に2008年のリーマンショックのあとは酷かったです。
2004年に労働者派遣法が改正されたことで、製造業への派遣労働もみとめられるようになり
工場の近くに派遣社員の方が住むためのアパートがたくさん建てられました。
人材派遣会社さんが、アパート1棟をまるごと借りてくれたりしてましたので、ちょっと不便なところにもアパートがどんどん建ちました。それでもお部屋がぜんぜん足りなかったのです。
派遣のニーズは時代の流れなんだ、と納得しそうになった頃にリーマンショックが起きました。
そしてリーマンショックが企業の収益悪化を招いた結果、いわゆる派遣切りが始まりました。
派遣社員さんはどんどんいなくなり、お部屋の退去申し込みが急激に増えてきました。
ある人材派遣会社さんから、30室のアパートのほぼ全室を解約されたこともありました。
工場の多かったその地域の家賃はどうしようもないくらい下がりました。
今でも似たようなことはときどき起きています。
大きな大学などが、地方のキャンパスを都心部に移転したりすると、
学生さん向けのアパートに空室が増えたりするケースなども同じような理由です。
謎の高家賃
お客様にアパートの収支計画案を提案させていただいていると、
お客様の方からときどき、「比較検討している他社さんからは、もっと手取りが多い提案をいただいていますよ?」と言われたりします。
それ自体は仕方のないことで、建築コストの違いなどがあるため、
どの建設会社も同じような収益の提案になるわけではありません。
でもちょっと他社さんの提案書を見せていただくと、
驚くほど高い賃料を前提にして作られた計画案を見かけるときがあります。
理由を尋ねると、答えはさまざまで
建物のデザインに高級感があり、ワンランク上の入居者層のニーズがあるから
とか
人気の設備を満載して、防犯設備や警備会社のサービスもある、至れり尽くせりのマンションだからとか
いろいろなセールスポイントが盛り込まれています。
確かに、高い家賃が取れるマンションがあることは否定しません。
地域によっては、庶民的な設備や外観の手ごろな賃料のアパートは見向きもされず、
高級で賃料の高いマンションの方が人気のあるエリアもあります。(非常に立地のよいエリアです)
立地が良いから、ある程度のお金を出せるお客様がその場所を選ぶので
そうなると、それなりの設備や高級感が求められますし、
そのために少し賃料が高くなっても払っていただけるお客様が来られるのです。
でも、それはごく一部の場所に限られています。
高級志向のニーズがない場所で、同じようなコンセプトで建てたとしても、同じように高い賃料がとれるわけではありません。
アパートを建てる場所が、ほんとうにその高い家賃に見合う場所なのかを見極めることが大事です。
私は「この場所では、そんな賃料は無理ですよ」とはっきり言ってしまうので、何度も商談を逃しました(笑)
でも、失敗しそうな計画案を実現してしまうよりはいいか、と思ってあきらめています。
採算さえ取れれば中身は問わない主義
土地活用の相談の最初のスタートのときから、採算ラインを厳しく設定してこられるお客様がおられます。多額の投資をともなう事業なのですから、当然のことだと思います。
でも、ちょっと行き過ぎなのでは、と感じるケースもあります。
その場所にふさわしいアパートかどうか、よりも
どれだけ儲かるか、ということだけに関心を向けておられるため、
入居が決まりやすくするために、いろいろアドバイスをさせていただいても
聞いていただけないことが多いです。
まず間取りのプランニングでは、
限られた敷地の中に、とにかく戸数をたくさん詰め込むことを求められます。
ファミリー向けの立地だな、と思う場所でも
ファミリータイプだとあまり戸数が取れないので、ワンルームで計画する、
といった感じです。
敷地内の駐車場がある程度必要な立地(特に郊外)でも、ギリギリまで台数を削ってそのぶん建物を広くするとか、
もちろん駐車場の車室の広さもギリギリに(ちょっと停めるのに苦労するくらい)
キッチンやバスルームなどのグレードも、最低限のランクまで落としてコストを抑え
それぞれのお部屋の広さや、収納の広さなども、標準よりもちょっと狭い広さになっていたりとか。
べつに悪いことではないのですが、なんとなく余裕がなく、魅力に乏しいアパートになっていきます。
まあでもその結果、目標としていた利回りが達成できる計画案はできあがるのですが
賃貸ショップさんにそのプランを持ち込んで、入居募集の相談に行くと店員さんからいっせいに突っ込まれます。
「なんでこんなプランなんですか?無理っす。。もうちょっと修正できませんか?」
…いや、知らんがな、といいたくなります。
まとめ
- アパートがいま不足している、は要注意
- 高すぎる賃料設定の裏付け調査は綿密に
- 利回りから逆算したアパートプランが正しい、とは限らない
最近のアパート建築のご相談で感じるのは、
アパート経営を「投資商品」として、まるで金融商品のように扱うお客様が多くなってきたことです。
たしかに投資としての一面はあります。
でも本来のアパート経営は、
質のいい住宅に住んでいただいて、入居者さんに住む楽しさを与えることでなりたつ
「住宅ビジネス」であることが本質だと思っています。
お客様、つまり入居者様のご満足を得られないアパート経営など成功するはずもなく、
そんな状態で利回りなどを計算することには意味が無いように私は感じています。
今回はちょっとネガティブな内容でしたので、気を悪くされた方がおられたらごめんなさい。
価値観はそれぞれですので、こういう考え方もある、という参考にしていただけたら幸いです。

